私が料理をするようになったのは母の影響が大きいのですが、その母が最も得意としていたのが漬け物でした。
実家は田舎の古い日本家屋でしたので蔵といいますか土蔵がありまして、その土蔵で随分沢山の種類の漬け物を年中漬けていました。
普通の塩漬け野菜や酒粕を使った奈良漬けなどは勿論、春に沢山とれた山菜やタケノコを保存目的の塩漬けにしたりもしていました。
また、変わったところでは近所の川でとれるフナを使ってフナ寿司も欠かさず作っていました。フナ寿司と言えば滋賀県の名産品ですが、琵琶湖の二ゴロブナでなくても、普通に近所でとれるギンブナで充分に美味しいフナ寿司を作ってくれたものです。
勿論、定番のぬか漬けもありまして、特に夏場には毎日の様にキュウリや茄子のぬか漬けが食卓に上りました。子供の頃はそのぬか漬け、なかでもキュウリが大好物で一人で一本くらいぺろりと食べていました。
その母はとっくにこの世のお勤めを終えて天国に行ってしまいましたので、美味しいぬか漬けを食べようと思ったらもう自分で作るしかありません。
そんなわけでぬか漬けを漬けるようになってかれこれ10年くらいは経つでしょうか。
残念ながら都会の家には田舎の家のように年中涼しい土蔵はありませんから、温度管理をしっかりする必要があります。私が暮らす大阪の夏は半端なく暑いので、ぬか床は基本ずっと冷蔵庫に保管するようにしています。野菜にもよりますが、土蔵での保管だと普通キュウリなどのぬか漬けは朝漬ければ夕食には美味しくいただけるのですが、冷蔵庫だと温度が低すぎて半日ではまだ未熟で美味しくありません。キュウリで丸一日、茄子で二日から三日程度は漬け込み時間が必要になります。ですが、それでホントに美味しいぬか漬けが頂けますので、漬け物好きの方は是非やってみてください。
以下、簡単にぬか床の作り方お教えします。
まず、煎りぬかをスーパーで買ってきて下さい。それから保管場所に見合ったサイズのぬか漬け用の容器。
作り方は至って簡単で、容器に買ってきた煎りぬかを放り込んでちょっと多めの塩と「鷹の爪、昆布、イリコ、粉末の辛子」などを適当に投入します。
水を加えて自分なりにしっくりくる堅さになりましたら、最初はくず野菜を放り込んで捨て漬けを何度か繰り返します。目安としては一週間程度捨て漬けを繰り返して、漬けた野菜からぬか漬け風の良い香りがしてきましたら、いよいよ本漬けの開始です。ちなみに捨て漬けも本漬けも野菜を漬けるときは必ず塩を野菜に適量揉み込んでから漬けて下さいね。
最初は旨味が少ない薄っぺらい味の漬け物しか出来ませんが、だんだんと美味しいぬか漬けが漬かるようになっていきます。
出来上がった漬け物に旨味が不足していると感じれば、昆布やイリコなどを入れてぬか床に旨味を足せばいいですし、ちょっとキリッとした味がお好みなら辛子の粉末を多めに入れれば、ほんのり辛子漬け風の香りがするぬか漬けが出来上がります。茄子の色が気になる場合は焼きミョウバンを入れればきれいな茄子が漬け上がりますし、ぬか床が酸っぱくなってしまったときは卵の殻を入れればすぐに酸っぱさはなくなります。
手入れについては、毎日底からかき混ぜろとかいいますが、あまり気にしなくてかまいません。私などはぬか漬けを作る夏場以外の季節は冷蔵庫にずっとほったらかしで一切手入れなどしません。夏場のシーズン中でも、毎日かき混ぜたりしていませんがぬか床が傷むようなことはありません。
ぬか漬けは夏場に必要なビタミンB群を豊富に含む上に、良質の乳酸菌も補給できます。ビールのつまみにもなりますので、是非トライしてみて下さい。
さてさて、何はともあれ美味しいご飯があればそれで幸せ。すてきな一日に乾杯。
◎カラスカレイの唐揚げ
◎麻婆豆腐
◎小松菜の胡麻和え
◎大根とキャベツの吸い物